精神科訪問看護全般
2025-06-05
退院したら終わり?!じゃない!

みなさんこんにちは!聴き上手です。
「退院したら終わり?」じゃない。
~その先の回復を支える、訪問看護のリアル~
■ はじめに:「退院=ゴール」ではない現実
精神科の入院は、人生のなかでも大きな出来事のひとつだと思います。
そして多くの人が「退院したら、もう大丈夫なんじゃないか」と思われがち。
しかし、実際には退院は“スタートライン”。
退院したところから、ご本人の「地域社会での生活」が本格的に始まるのです。
今回は、「退院=終わり」ではない理由と、私たち訪問看護がその後どのように関わっているのか、具体的な取り組みとともにお伝えします。
■ 退院直後に訪れる“現実”
退院後、最初に多くの方がぶつかるのが生活のギャップです。
病院では決まった時間に食事や服薬、起床就寝があった(いわば生活がオートメーションで流れているようなものですね)
看護師や医師が常に近くにいたので、管理的側面があるとはいえ「守られている空間」で、ある意味安心して過ごせたという方もいらっしゃいます。
でも、退院するとそのすべてが自分の選択と判断になります。まだ年齢的に親御さんがサポートをしてくれたり、配偶者が面倒を見てくれるという方も
もちろんいらっしゃるとは思いますが、基本的には
起きる時間も、食事も、自分次第
不安になっても、誰にもすぐに相談できないことがあったり
外に出ることも、人と会うことも億劫に感じてしまうと引きこもって誰とも話さない日がでてくる。
そうした“日常の壁”にぶつかり、「やっぱり無理だ…」「このままじゃ不安…」「誰かに相談したい」と感じる人も少なくありません。
■ 精神科の“リカバリー”は「暮らし」の支援から
精神科における「回復(リカバリー)」とは、病気が完全に消えることではありません。
むしろ、「病気があっても自分らしく生きていけること」を指します。「生きることの主導権を取り戻すこと」だとも言われています。
そこで重要になるのが、「暮らし」をどう支えるか。
つまり、生活支援=訪問看護の出番です。
たとえば私たちは、以下のような支援を行っています:
薬の管理や副作用チェック、のみすぎたり、頓服が有効に使えていなかったり、時には重複した処方のままの方もいらっしゃいます。
薬には必ず副作用があります、適正な量を用法を守って「使っていく」意識が大切です。
朝起きる・夜眠る生活リズムのサポート。生活リズムが乱れると、自律神経が乱れ、免疫力も下がりますし、こころの耐性も下がります。
シンプルなことですが、生活リズムをと問えることは健康の基本です。
買い物、食事、掃除など日常生活のアドバイス。やらなくちゃいけないこともやっぱりやりすぎると反動がきてしまいます。必要な時はヘルパーを導入するなど
使える支援を利用しながら乗り切っていきましょう。
「この調子、しんどくなる前兆かも」といった兆しの共有はセルフコントロールの第一歩です。自分を知る事には他者との関りが不可欠。相手を通して自分が見えてきます。
愚痴や不安、誰にも言えない気持ちの“吐き出し先”になる。一旦言葉にして発することで気持ちを外在化し、整理していきましょう。こころの荷物をどんどんおろして
フラットな自分と向き合うことができるようお手伝いします。
・・・・様々ありますが、こういった積み重ねが、「再び社会の中で安心して暮らす力」を育てることにつながっていきます。
■ 退院後こそ“孤立”しやすい
意外かもしれませんが、「退院した直後」は周囲の理解や支援が減るタイミングにもなりがち。
周囲の人から
「もう元気になったんでしょ?」
「繰り返し入院しないように、ちゃんとしてよね」とちょっと突き放された感じになったり、
「入院してたんだ…」と病気の理解を得られない人との距離感を感じてしまったり
あとは体力的に活動量が減っているので疲れやすくなっていることが殆どです。
やっと退院できたと思ったけど、思うように体が動かないといったこともよくあります。
そうして外出の機会が減り、連絡の取れる人や機会が減ってしまうと
「誰にも頼れない」「何をどう話したらいいかも分からない」と感じるようになりがちです。
訪問看護は、そんな時こそそばにいて、そっと支える存在でありたいと思っています。
何故なら、私たちはご自宅にこちらから伺うことができるサービスであり、精神科病院の退院後は3か月間訪問回数を
増やすことができるからです。
一日でも早くご自身のペースに戻れるようにサポートしていきます。
■ “聴き上手”の支援:その人の「歩幅」で
私たち「訪問看護ステーション 聴き上手」では、退院直後から長期にわたり、その人のペースに合わせた支援を大切にしています。
◎ 「まずは一緒に考える」姿勢
無理に生活を整えさせようとせず、「今どこが一番つらいか」「どこなら動けそうか」を一緒に整理するところから始めます。
◎ 会話を“目的”にしない
無理に話さなくてもOK。「来てくれるだけで安心」という時間も、私たちは大事な看護だと考えています。
◎ 小さな変化に気づく
「今日は着替えてたね」「いつもより目が合うようになったね」——
そうした小さな変化を大切にし、言葉にしてフィードバックします。
それが自信となり、次のステップに進む力になります。
■ 利用者さんの声
「退院してから、どうすればいいのか本当に分からなかった」
「親にも友達にも言えないことが、看護師さんには言えた」
「調子が崩れても、“また来てくれる”という安心感があるから、自分で乗り越えられるようになった」
退院後の訪問看護は、「支える」というより「一緒に歩く」。
そんな感覚でいてくださる方が多いです。
■ まとめ:「退院」は“新しいスタート”
退院したからといって、すぐに社会復帰できるわけではありません。
けれど、それは恥ずかしいことでも、情けないことでもないのです。
誰もが、自分のペースでいい
困ったときは、助けを求めていい
「回復」はひとりでがんばるものではなく、支えてくれる人と一緒に進むもの
私たち「聴き上手」は、あなたの「退院のその先」を支えるためにいます。
無理に頑張らなくて大丈夫。
“あなたの歩幅”で、一歩ずつ前に進んでいくことを応援します。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。