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精神科訪問看護全般

2024-07-31

愛着形成について

みなさんこんにちは!精神科に特化した訪問看護 聴き上手です。先日退院前のカンファレンスに参加した時に、地域の支援者の方から、対象者に関する主治医への質問がありました。「愛着形成の歪みがこの人をこんな風にしているのですか?」と。

主治医からはそれがすべてではないが、多少なりとも関係はしている可能性はあり、家族全体をみればそれは推測できますねという回答でした。そのご家族は家人全員が発達障害をお持ちで、コミュニケーションに問題を抱えているという特徴があり、愛情がないわけではないけれど、愛情を示す側、受け取る側どちらにもコミュニケーションの障害があると問題が深刻化することは容易に推測できます。

今日は愛着形成の歪みが人の成長に及ぼす影響について思うところをまとめてみました。

愛着形成の歪みは、個人の心理的・社会的な発達に深刻な影響を及ぼすことがあります。愛着形成は、子供の頃の養育者との関係によって形作られ、その後の人生にわたって影響を与える重要な要素です。以下に、愛着形成の歪みが及ぼす影響について説明します。

【目次】
1. 精神的健康への影響
2.対人関係への影響
3.子育てへの影響
4.社会適応への影響
まとめ



1. 精神的健康への影響
愛着形成の歪みは、個人の精神的健康に影響します。特に、不安定型や回避型の愛着スタイルを持つ人々は、以下のような問題を抱えることが多いと言われています。

不安障害: 愛着が不安定な場合、個人は常に拒絶されることを恐れたり、人間関係において過剰な不安を感じる。
抑うつ: 安定した愛着が形成されないと、自己評価が低くなるなどして、抑うつ症状を経験することが多い。
パーソナリティ障害: 愛着の問題は、境界性パーソナリティ障害などのパーソナリティ障害の発症と関連しています。これらの障害は、自己イメージの不安定さや感情の制御の困難さが特徴です。対人関係がこじれることが多いので、社会での生きづらさを感じやすいと言えます。

2. 対人関係への影響
愛着形成の歪みは、対人関係において重大な影響を与えます。愛着の問題を抱える人々は、以下のような対人関係の困難を経験することが多いです。

親密さの回避: 回避型愛着スタイルの人々は、親密な関係を築くことを恐れ、他者との距離を保とうとします。これにより、深い関係を築くことが難しくなります。
過度な依存: 不安型愛着スタイルの人々は、過度に他者に依存し、相手に過剰な期待を抱くことがあります。これにより、相手が心理的負担となり、持続的な関係を築くことが難しくなります。
信頼の欠如: 愛着の歪みは、他者を信頼する力にも影響を与えます。信頼関係を築くことが難しく、対人関係のなかで持続的な不安と緊張を抱えがちです。

このような状態がひとつではなく、相まってさらに複雑で困難な状況になることもあり得ます。

3. 子育てへの影響
愛着形成の歪みは、次世代への影響も及ぼします。愛着の問題を抱える親は、自分の子供に対しても健全な愛着を形成するのが難しい場合があります。

養育態度の再現: 愛着の歪みを持つ親は、自身の養育者から受けた態度を無意識に再現することがあります。これにより、子供も同様の愛着問題を抱えるリスクが高まり、負の連鎖が起きる場合があります。
感情的な無関心: 愛着の問題を抱える親は、子供の感情的なニーズに受容的に応じることが難しく、子供が情緒的に不安定になる可能性があります。
過剰なコントロール: 不安型愛着スタイルの親は、子供に対して過剰なコントロールを試みることがあります。これにより、子供が自主性を発揮するのが難しくなることがあります。

4. 社会的適応への影響
愛着形成の歪みは、社会的適応にも影響を与えます。社会生活や職業生活において、愛着の問題を抱える人々は以下のような困難を経験することがあります。

職場での対人関係の問題: 同僚や上司との関係において、不安や不信感が強まり、職場でのストレスが増大します。
社会的スキルの欠如: 健全な愛着が形成されていないと、社会的スキルの発達が遅れ、対人関係の築き方が分からないことがあります。
孤立感: 社会的な関係を築くのが難しいため、孤立感を感じやすくなります。これがさらに精神的健康に悪影響を及ぼすことがあります。


まとめ
愛着形成の歪みは、個人の精神的健康、対人関係、子育て、社会的適応に深刻な影響を与えます。このため、例えば子供を育てるときには特に子供の健全な愛着形成を促進するために、養育者が子供の情緒的ニーズに適切に応じ、安定した愛着を築くことが重要です。また、愛着の問題を抱える人が適切なケアや治療を受けることで、その影響を軽減し、より健全で幸せな対人関係を築くことができるようになる可能性が高まります。訪問看護の中で、複雑に絡み合う人間関係に直面するケースも多く、その中でも愛着形成の歪みがもとになっているのでは?と思われるケースもあります。ケアする側には俯瞰的視点をもって全体を捉えつつ、愛着の問題に取り組んでいくという両輪の視点が必要です。そのためにも、日々学びを深めつつ、支援を進めていきたいと思う次第です。